-合宿最終日、夜-
「ほら、源太!こっちのお肉、焼けてるぞ~。殿!お肉ばっかりでは栄養が偏ります、お野菜も摂ってください!千明、そこのソーセージはまだ焼けてない!」
「……流之介って、焼き肉奉行だったの忘れてたよ…」
「…この合宿にバーベキュー組み込んだのはこれでか」
「でも、バーベキューなんて久しぶりやんな?」
「千明の歓迎会以来だよな。俺はこーゆー賑やかなの大好きだぜ!」
「確か、あの時は外道衆の邪魔が入って、大変だったのよね…」
「そっか。あれから半年近く立つんだよな~」
「てゆーか…源太は完全にうちの部に馴染んでるけど、クッキング部の方はいいの?」
「ん?ああ、大丈夫だろ。部長が居なくても何とかやってるみたいだしな」
「たまには顔出してくれってこの間私に連絡あったぞ。ダイゴヨウから」
「まじかよ…やべぇなぁ」
「んじゃさ、今度、俺も一緒に連れてってくれよ」
「おう、千明、任せとけ!これでみんなに面目が立つぜ~」
「どーゆー事?」
「いや、えっと…千明って、結構女子部員に人気あってさ」
「え…そーなんや…」
「…以外だな」
「以外って何だよ!」
「…谷千明さんは、人気があってうらやましい事でござりますなぁ」
「ア、アクマロ!いつの間に!」
「まぁ、細かい事は良いではござりませぬか。侍部の皆さんが合宿をされているとお聞きしました故、こうして参上したまで。何か問題がござりますか?」
「問題ありまくりでござりますっての!」
「ほう、クッキング部の女子の皆さんに人気者の谷さんは手厳しい…それでは仕方がありませんなぁ。帰る事に致しましょう。それでは、ごきげんよう」
「…まったく、何を考えてるのか…ことは、どうした?」
「…あ、殿様…何でもないです。えっと…あっちのお肉焼けてるみたいや、流さん、うち追加のお肉とか取ってくるわ」
「あ、ああ…」
「(丈瑠)」
「(…ことはは任せたぞ)」
「(ん、了解)あたしも手伝ってくるね」
「…頼んだ」
「あ~もぉ、何だよ、アクマロの奴、わけわかんねぇよな」
「千明。ちょっといいか」
「?」
「単刀直入に聞く。ことはをどう思っているんだ?」
「ちょ、丈ちゃん!?」
「答えろ」
「と、殿!」
「お前たちは黙ってろ。どうなんだ?」
「な、ンだよ急に!」
「いいから、答えろ」
「…お前はどーなんだよ!」
「何?」
「気付かないフリすんなよ!ことはは…お前の事、好きなんだ!!」
「千明?」
「源ちゃんだって、わかってるんだろ!ことはは…いつも、いつも、お前を見てる!一緒に帰ったりして、それなのに、俺が、好きだ、なんて伝えたら、混乱すんだろ、だから!」
「……千明」
「なんだよ、流之介!」
「腹を食い縛りなさい!」
「……痛ってぇー!な、な、殴った、つか思わず腹食い縛ったのに、頬っぺた殴った!?」
「…お前は、一体、何を」
「いい、流之介。後は俺が」
「とりあえず、ほら、濡れタオルで冷やせよ」
「…何なんだよ」
「千明、一回しか言わないから良く聞け。ことはが好きなのは俺じゃない。お前だ」
「…へ?だって」
「ことはが俺を慕ってるのは家族みたいなものとしてだ。実際みつばさんにも頼まれてるしな」
「…そんなの」
「本当だ。ことはが田舎から1人でこっちに出て来ているのは知っているな?」
「…ああ」
「それは長期入院しているみつばさんの為だ。みつばさんの近くにいて、少しでも…励ましたいという…なんて、健気な…ぐす…」
「ちょ、泣くなって、流之介!」
「ん~で、一人暮らしってわけにもいかねぇしよ、丈ちゃんとこで下宿してるってわけだ」
「本当は茉子の所でもいいんだが、病院とは逆方向だ」
「それに、丈ちゃん家は病院から一番近い」
「あと志葉家と花織家は昔から親交がある。そこで、ことはを預かることになった」
「うう、ぐすっ、そういう事だ」
「そ、か…そっか。なんだよ、俺、何にも知らなくて…つか、そーならそーだって、何で教えてくれなかったんだよ!」
「いや、俺達てっきり千明も知ってるもんだと思っててさ」
「それに関しては悪かった」
「そーだよ、ったく」
「…所で千明」
「何だよ?」
「先程の殿の質問なんだが…」
「ことはちゃんの事、好き、なんだよな!」
「あ、や、えっと、それは…」
「誤魔化すな
「丈瑠…」
「…千明、お前、侍部に何で入った?」
「…えっと、確か、ことはが…」
…
……
………
-あ、あの、侍に興味はありませんか?
-何だよ、さむらい?つか、誰?
-Aクラスの花織ことはです…えっと、侍に…
-ねぇよ。んじゃな。
………
-あのっ、侍に興味はありませんか?
-またかよ花織。だから、何だよ、侍って。意味わかんねぇ。
-侍は、侍です。谷くん、きっと侍に向いてると思うし…
-わっけわかんねぇな。
……
-た、谷くん、おはよう…!
-おーう花織、おっはよ。侍部には入んねぇよ?あと、谷くん、は何かしっくりこないからさ、千明でいーよ。
-…ちあき…?
-そ。仲のいー奴はみんなそー呼ぶしさ。俺も、ことは、でいーよな。
-…ん。
-じゃな。ことは。
-また、あとで、ち、ちあ…きくん。
-ちーがーう!千明、だろ?そー呼ばないと返事しないからな!
-…えっと、じゃ、ち、千明…また、お昼休みに来てもええかな…?
-おう、じゃさ、昼飯、一緒に食う?
-っうん!
-じゃ、教室に迎えに行くからさ。
-うん。待ってる。
…
-ことはー!昼飯、行こうぜ!
-あ、千明。すぐ行く!
…
-…んあー!屋上で食うなんて、ひっさしぶりだぜ~。
-うちは、初めてや。
-なーんか、やっぱ、いいよな~。
-?
-なんつーか、俺って、別に勉強好きなわけじゃねぇし、これといった趣味もねぇしさ。得意なのは体動かす事くらいだろ。このまま平凡にさ、卒業して、適当に大学入って…て考えたら…何か、こーゆーのも、悪く無いなって、な。
-千明…
-侍、か…いいぜ、ことは。入ってやるよ、侍部。
-ほんまに!
-ああ、男に二言はねぇ!なってやろーじゃん、侍ってやつによ!!
-ありがとう!千明っ!
-うわっだ、抱きつくなって!ことは!
-ありがとう、ほんまに…一緒に頑張ろうな?
-(…何だろう、なんか、ドキドキしてる、俺…)
…
……
………
「千明。自分の気持ち、整理できたか?」
「…ああ。丈瑠、流之介、源ちゃん、世話かけて、ごめん」
「良いって事よ!」
「ああ、その通りだ」
「いいから、行ってこい。この先はお前次第だ」
「それなんだけど…丈瑠…ごめん…一足遅かったわ…」
「どうした茉子?」
「あ~殿様や~。流さんもいてはる~。えへ~」
「こ、ことはぁ!?」
「な、何があったんだよ茉子ちゃん!」
「…えっーと、ねぇ」
-千明が甘酸っぱい空気を醸し出していた頃…
「(……いや、やわ…うち)」
「(…千明、もてんねやな…そらそうやわ…)」
「(千明は、優しいし、明るくて…そこが、ええ所やのに)」
「(…モヤモヤする…何やろ、これ)」
「(…ちょっと、何か飲んだら、落ち着くやろか…)」
「………うち、何してんのやろ…」
「…こーとは」
「茉子ちゃん…うち…」
「大丈夫だから、ね?」
「茉子ちゃん…ぐすっ…」
「ことは。泣かなくても大丈夫」
「うち、何か変やわ…ぐすっ…千明が、女の子に人気あるって、聞いたら…すごい、モヤモヤしてきてな…」
「ことは。千明の事、好き、なのね?」
「…ぐすっ、すん…そうやわ…うち…」
「ストップ。そっから先は本人に、ね?」
「…うん……うう……茉子ちゃん…」
「どーしたの?」
「何か……あれ…茉子ちゃん、たくさん、いてる…あは、あはは…」
「ちょ!やだ、ことは、て、お酒臭っ!何したの!それ、そのコップ!?」
「ん~~?」
「お酒…何で…っ!まさか!?…やだ、お茶の中にお酒入ってるじゃないの!何で!?」
「…茉子ちゃ~ん。髪の毛サラッサラや~」
「…まさか、アクマロが…何か仕込んだってワケ?」
「良い匂い~茉子ちゃ~ん」
「ちょ!やだ、ことは、そんな所、触らないの~!」
「茉子ちゃん~、うう…クラクラする~えへ~」
「…駄目だわ…あ~、丈瑠に何て言おう…」
-そして、今。
「迂濶、だったわ…」
「いや、不可抗力だ。気にする事はない」
「しっかし、どうするよ丈ちゃん」
「う~ん。とにかく、酔いが醒めるまで、大人しく…て、うわっ!?」
「殿様~。えへへ~」
「ちょ!丈瑠!?ことはから離れろよ!」
「流さんも~こっち~」
「流之介!!」
「源さ~ん。座って~」
「源ちゃん~!」
「茉子ちゃん~ええ匂いや~」
「ね、姉さんも!」
「…ちあき。あんな」
「な、何だよ」
「この4人は、うちの大切な…お兄ちゃんとお姉ちゃんや」
「…ああ」
「でもな、千明は、ちがう」
「え…」
「うち…ちあきのこと…すきや…」
「!!!」
「お兄ちゃんとか、お姉ちゃんとは、ぜんぜん、違くて…そういう、すきとは、ぜんぜん…あかんかな…?」
「ことは…お前…何で」
「ちあき…?」
「だあぁぁっ、もう!何で先に言うかな!」
「?」
「みんなも、良く聞けよ!俺は、ことはが、好きだ、大好きだ!!ことは、付き合ってくれ!」
「…ふあ……」
「ことは?」
「…んう…眠い……(ρ_-)ノ…」
「ことは!?」
………
……
…
「なーんか、お約束って感じだけど」
「しかし、気持ち良さそうに寝てるな、ことはちゃん」
「ああ。そうだな」
「しかし、千明…さっきは、格好良かったぞ!」
「う…うっさいな…」
「いーや!素晴らしかった!!私は、まるで、映画を見ているかと思った位なのだからな!」
「ハイハイそこまで。千明、後は任せたわよ」
「ちょ、姉さん…!」
「ほら、あんた達も」
「ああ」
「千明、しっかりな」
「変な事したら俺たちが黙っちゃいないぜ~」
「ちょっと、源ちゃんまで!…て、行っちゃったよ…」
「………」
「…ことは…大好きだからな…」
「…ちあき…うちも…すきやから…」
「……!!ふあっ!て、寝言かよったく…」
「……」
「……ん…」
「…………」
「…じゃ、俺は先に行ってるから。ゆっくり休んで、気分落ち着いたら来いな!」
「(………)」
「(…うわ…どうしよ…)」
「(………ちあき、今、うちに…)」
「(…ふふ…ちあき…大好き…)」
この2人、何とかうまく行った様子。六人の侍が織り成す青春活劇、シンケン学園!侍部~銀幕版-部活と恋は夏の陣-エピローグへと続きます。
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