-合宿も三日目-
「(んあ…明るい…朝か…何時だ?う~4:30か…まだまだ時間あんじゃん…二度寝しよ、て!)」
「…んん……」
「(ことは!ちょ、!近い近い近い、顔、近い!つか、何で!)」
「(衝立てあったよな、どこ行った!?ちょ!ヤバいって!えっと、そうだ、寝よう、も一回寝よう!)」
「…んう…」
「(…ことはって……可愛い…よな、やっぱ)」
「(て!俺、何考えてんだ!寝よ、早く寝よ!)」
………
……
…
「…あき、千明。千明起きろ!朝だぞ」
「ん、んあぁ……んん…」
「ほら、千明、起きて起きて」
「うー…流之介、姉さん…?…」
「だぁああ、千明寝るなって!ことはちゃん、手伝って!」
「千明、朝やで?早よ起きな、な?」
「うー…(っことは、近い!)お、はよぅ」
「起きたか?早く顔洗ってこい。朝の鍛練始めるぞ」
「わぁかってるって…」
「?どーしたん、千明」
「な、何でもねーよ。顔、洗ってくる!」
「あ、千明、タオル持ってかな!」
「…仕方ないな…お前たちは先に中庭に行ってろ。千明連れてすぐに行く」
「はっ!わかりました。行くぞ源太」
「おうよっ。2人も行こうぜ」
「了解。行こ、ことは」
「…うん」
………
……
…
「…ふあー、冷たっ。(ったく、なんで衝立て無くなってんだよ…びっくりするっつーの!てゆーかさぁ…一応俺も男なんだけどな…)」
「(あ~…男として意識されてないって事か…くそっ…)」
「(…でも、やっぱ、可愛かったよな…や、まてよ…もし隣に寝てんのが…俺じゃなかったら…)…ああっもー!ことは、無防備過ぎるっつーの」
「ことはが何だって?」
「た、丈瑠!?」
「タオル、忘れてるぞ」
「…お、サンキュ」
「お前なぁ、意識し過ぎなんだよ」
「…何が」
「まぁいい。早く顔拭け。いくぞ」
「(むー。何だよ丈瑠のヤツ…余裕ってか?)」
………
……
…
「やはり朝の鍛練は気持ちが良いものだな!」
「そーね!空気も綺麗で、なんだろ、研ぎ澄まされるって感じかな」
「今ならミシュランも唸るような寿司握れそうだぜ!」
「…源太、それは流石に無いだろ…」
「うわっ酷ェな丈ちゃん…」
「さて、と。そろそろ朝食にするか。良い頃合いだろ」
「賛成!所でさ、朝飯の準備って…」
「…今度こそ、あたしがやるって言ったんだけどねぇ」
「お坊さん達が用意してくれてはるんやって」
「そっか。うん、腹減ってきたな!早く行こうぜ、ことは。みんなも」
「うん!あ、そうや、千明。今日のお昼は茉子ちゃんとウチで作る事に決めたんよ」
「…え。そー、なんだ…やったー」
「(流之介くゥン!)」
「(すまん、千明…色々策を練ったんだが…諦めてくれ)」
「(くぅっ…腹くくろうぜ…丈ちゃん)」
「(ああ…)」
「あぁ~楽しみやな~♪茉子ちゃんの手料理久しぶりや~。ウチ、お手伝いして、邪魔にならへんかな?」
「ううん、頼りにしてるわよ。さ、行きましょみんな」
「(…終わったな…今年の合宿は終わったな…)」
………
……
…
「さて、と。今日の午前中は男子チームと女子チームに別れての鍛練でいいんだな、流之介」
「はいッ。女子チームは…昼食の準備をよろしく…頼むぞ」
「も~流之介、プレッシャーかけないでよ~。あ、そうだ、ついでにお洗濯もしちゃうから服とかタオルとかまとめて出しておいてね」
「え?いーのかよ、姉さん」
「そりゃ助かるぜ、茉子ちゃん」
「それでは茉子、ことは。後を頼む」
「オッケ。じゃ、ことは」
「うん。ほな、みんなも鍛練頑張ってな」
………
……
…
「んー結構な量あったわね~。ま、後は干して終わり、だね。ことははこっちの分、お願いね」
「うん。任せといて」
「あ、洗濯挟み足りるかな…ちょっと取ってくるね」
「ありがと、茉子ちゃん」
「(…ん~。ウチもいつか、茉子ちゃんみたいにしっかりした女の子になれたらええなぁ…)」
「(茉子ちゃん、大人っぽいし、やっぱり男の子って、そうゆうタイプの方が好きなんかなぁ…)」
「…千明、ウチのこと、どう思てんのやろ…」
「…気になるんだ」
「ま、茉子ちゃん!」
「ごめん、盗み聞きになっちゃったね」
「え、と…違くて、ただ、えっと、その」
「いいよ。無理には聞かないから。ことはが言いたくなったらいつでも聞く」
「茉子ちゃん…」
「でも、ことは。一つだけアドバイス。自分にもっと自信を持ってて良いと思う。さて、と。さっさと終わらせちゃいましょ!結構時間かかっちゃったし、すぐにお昼の準備しないと間に合わないかもよ~」
「茉子ちゃん…ありがとう」
「ん~ん。さ、早くやろっ。男子チームが帰ってきちゃうわよ」
「うんっ!」
………
……
…
「あ~つっかれたぁ!」
「まったく、千明はそればっかりだな」
「でもよ、入部した時に比べたらずいぶん変わったよな、千明」
「確かに…始めの頃なんて…」
「だあぁあ言うなよ!」
「ま、まだまだこれからって感じもするけどな」
「お、丈ちゃん厳しいな~」
「ちぇっ」
「慢心せず鍛練すれば、いずれ立派な侍になれるという事だ」
「わかってるよ!」
「…フッ、そうだな」
「むー。バカにして。いーさ、いつか絶対追い抜いてやるからな!よっしゃ、流之介、境内まで競争しよーぜ、よーい、ドン!」
「わ、待て千明、こらっ!」
「丈ちゃんも、気ィ付けないと追い付かれちまうぜ」
「そーかもな。何だかんだ言って、千明の成長は目まぐるしいからな」
「お~っと。以外だな、結構評価してんじゃん」
「まぁ、な。基礎的な部分はまだまだだが、しっかり努力もしてる様だし、こっちとしては鍛え甲斐がある」
「ウンウン。俺たちの可愛い弟分だしな」
「可愛いかどうかはさておき、だけどな」
「ハハッ違いねぇな」
………
……
…
「(さて…これは…)」
「(おにぎり?…と謎の汁と、この黒いのは何だ…?)」
「さ、早く食べましょ?」
「「…い、いただきまーす!」」
「(ええい!侍たるものこんな所で挫けては…しかし…)」
「おお、丈瑠様、ちょ、丁度良かった。昼食でございますな。出来たての胡麻豆腐がありますので、よろしければご一緒に」
「ご、ご住職…」
「ありがとうございます~。正直、時間あんまり無くて量的にどうかなって不安だったんだよね」
「結構お料理って時間かかるんやな~。ほんま茉子ちゃん居らへんかったら絶対無理やったわ」
「(坊さん、グッジョブ~!)」
「(だがしかし、油断するなよ、千明。一応、茉子の料理も食べないとな)」
「(メインは茉子ちゃんの料理かぁ…この合宿一番の山場、だな)」
「(お前たち、行くぞ!)」
………
……
…
「昼からはモヂカラの稽古かぁ。つかさ、胡麻豆腐にあんな力があったとはね~」
「茉子の料理を食べた後に胡麻豆腐を口に含んだら、あの衝撃が一瞬にして無くなりましたからね…」
「そうだな…正直、驚いた。今回の合宿、じいがこの場所を選んだ理由がなんとなくわかった気がする」
「それは、深読みしすぎじゃねぇか?」
「いや…源太…考えてもみろ…もし彦馬さんがここじゃなく、学園での合宿を決めていたら…」
「…ある意味、ニュースになってたかもしれないよな」
「…合宿終わったらじいちゃんに寿司奢ってやろう…」
「よし、早く洗い物済ませて戻るぞ!あんまり遅いと2人に怪しまれ…誰だッ!」
「邪魔するぞ…」
「附破…十蔵…何しに来た!殿、お下がり下さい!」
「そういきり立つな。まぁ、歓迎されないのは分かる、が、今は黙っておいてもらおう」
「…何の用だ」
「ひとつ教えておいてやる。アクマロには気を付けろ…ドウコク達の動きに気を取られてノーマークの様だが…いつかお前たちを潰しにくるぞ」
「何でわざわざそんな事、俺たちに教えるんだよ」
「さぁな…部長はわかっていると思うが…そうだ寿司屋、また寿司食わせろよ」
「そりゃ構わねぇけどよ、十蔵てめぇ、丈ちゃんに変なちょっかいかけたら承知しねぇからな」
「フッ考えておくとしよう、じゃあな」
「ちょっと待てよ!って帰っちまいやがった」
「ああぁぁあああ!」
「どうした流之介?」
「ご、胡麻豆腐が…なァい!」
「じゅうぞう~!!」
………
……
…
「…んむ、美味いな…胡麻豆腐か、悪くない、が、やはり寿司の方が好きだな」
「……」
「隠れてないで出てきたらどうだ?」
「…フン、気が付いていたか…」
「当たり前だ。こんな所にまで、とはご苦労な事だな、太夫」
「それはお互い様だろう…?お前こそ何をしている?」
「……侍部がどうなろうと俺は一向に構わない、だが、部長は別だ…奴とは、いずれ…な」
「ま、わちきは両方ともどーでもいいんだが…ドウコクの奴がうるさいんでな」
「フッ。お前も、楽じゃないな…」
「まぁ、いいさ。派手に動きすぎてドウコクの逆鱗に触れないように、な」
「…ああ、消されないようにうまくやるさ……お前も、アクマロには気を付けろよ。ここにも潜り込んでいる様だしな」
「…やはり、か。お前とは違った、嫌な気配がしていたのはそれか」
「…フッ気付いていたか。ならいい。じゃあ、な」
「…ああ……」
………
……
…
合宿三日目、突然現れた十蔵、ドウコク達も動き出し…そして、どうやらアクマロも潜んでいる様です…果たして千明とことはは、お互いの気持ちを通じ合わせる事が出来るのでしょうか…
シンケン学園!侍部~銀幕版-部活と恋は夏の陣-第三幕へと、続きます…
おまけ。
「…おや、電話だ……どうしたんだい、ドウコク……太夫?ああ、うまく忍び込んだみたいだよ。…今?あのはぐれ者に気付かれたみたいでねぇ…いや、大丈夫さね、アクマロがどうのって話してるだけの様だが…ドウコク…そんなに太夫が心配なら何でこんな所に来させたりしたんだい?…まったく、いい加減素直におなりよ。影からこっそり覗き見するアタシの身にもなっておくれよ!……ああもう、わかったわかった、ちゃんと見とくさね、だから、おとなしくしといておくれよ?…くれぐれも太夫に連絡………お前さん…連絡したね…?まさかとは思うけど………またかい!何で喧嘩になるんだい!まったく…仕方ないねぇ、あとはアタシが収めるから……はいよ、じゃ、また連絡するよ」
「まったく…ドウコク…お前さんも因果な性格だねぇ。さて、と、太夫に連絡して、喧嘩の原因でも探ってみるかねぇ。2人がうまくやってくれないとこっちの身が保たないってもんさね………あ、太夫かい?アタシだよ…」
………
……
…
シタリさん、大変ですね…(笑)
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